低身長

成長曲線

各製薬会社のサイトから成長曲線をダウンロードできます

A ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
B ファイザー株式会社
C JCRファーマ株式会社
成長のしくみ

生まれたばかりの赤ちゃんの身長は約50cmですが、1歳までに25cm、2歳までに10cm、3歳までに8cm、4歳までに7cm伸びて約100cmになります。それ以降の年間伸び率は6cm前後でゆっくりと低下し、思春期前に最低となって、その後思春期の急激な成長スパートが始まって最終身長にいたります。
生まれてから3歳までの成長にとって最も大切なのは栄養、3歳以降で最も大切なのは成長ホルモン(GH)です。身長は骨の両端にある成長軟骨が増殖して骨に変わりながら伸びます。この成長軟骨の増殖に最も大切なのが、GHが軟骨細胞に働いて合成されるIGF-1という成長因子です。GHはタンパク質から筋肉を作るときにも重要な役割を担っています。
1日に数回GHの分泌のピークがありますが、思春期前のこどもでは睡眠中に最も高いピークが現れます。したがって十分な睡眠はとても大切で、とくに長さよりも深さが重要です。思春期になると覚醒中にも大きなピークがみられ、1日に分泌されるGH、IGF-1が増加し、性ホルモンも加わって成長スパートを引き起こします。
適度な運動は細胞の働きを活発にしてGHの分泌を促します。また体を動かして骨にリズミカルな圧力がかかると、成長軟骨の増殖が促進されます。敏捷性やリズム感を養うようなスポーツを楽しみながら行うのが望ましいと考えられています。 栄養ではタンパク質が重要ですが、炭水化物、カルシウム、ビタミンも大切です。これを食べれば背が高くなるというような、特定の食品やサプリメントはありません。背の低いお子さんは少食の子が多いので、少しずつでも多くの食品をバランスよく食べることが大切です。

成長曲線からわかる低身長

身長はお父さん、お母さんから受けつぐ遺伝的な要因に、ホルモンをはじめとしたいろいろな因子がはたらいて決められます。平均身長はあくまでも同じ年齢のお子さん全体の平均であり、背の低いお子さんから背の高いお子さんまでさまざまにいて当たり前です。小柄であることイコール病気ではありません。
身長はクラスや学年の中で比べるのではなく、何歳何ヶ月の平均身長と比べることが大事です。低身長の多くは体質によるものですが、治療の必要なホルモンの異常も隠れています。生まれつきの病気でも3歳以降に成長の遅れが目立ってくることが多いので、ぜひ成長曲線を付けてみてください。数字ではなく、曲線として視覚的に捉えることで、成長の変化を見逃さず、異常を早期に見つけることができます。
成長曲線は、リンク先の製薬会社のホームページからダウンロードできます。この成長曲線は2000年の日本人小児の年齢別身長・体重の平均値を曲線でつなぎ、男女別に作成されたものです。横軸が年齢で左側の縦軸が身長、右側の縦軸が体重をあらわしています。上の曲線が身長で下の曲線が体重です。太線で表された平均の曲線の上に2本、下に4本の曲線が描かれています。一番上の線(+2SD)と平均から2つ下の線(-2SD)の間に約95%のこどもが含まれています。同じ年・月に生まれたお子さん100人を背の高さ順に一列に並べた時、前から2、3番目の子が-2SDの線上に、50番目の子が平均の線上に、後ろから2、3番目の子が+2SDの線上に立つと考えると分かりやすいでしょう。そして-2SDよりも背が低い場合を“低身長”といい、100人のうち前から1、2番目のお子さんが含まれることになります。
成長曲線を付ける前に、母子手帳、幼稚園・保育園や学校の成長記録など、計測日と身長・体重が記載されたものを用意します。次に、計測日が何歳何か月に相当するかを考えて、計測値をグラフ上に点で記入して線で結びます。グラフの目盛りは3か月きざみになっていますので正確に記入してください。
成長曲線からは次の2つのことを知ることができます。1つめは現在の身長の程度で、-2SDの線よりも下であれば、低身長であると解釈します。2つめは身長の伸びかたで、お子さんの成長曲線の傾きが標準成長曲線の傾きと比べて極端に立っていたり、寝ていたりした場合に異常であると考えます。つまり、以下のような場合には何らかの病気があるかもしれないと考えられます。いずれかに当てはまる場合は、小児科医にご相談されることをお勧めします。

1 身長が-2SDよりも低い場合
2 成長曲線の傾きが標準成長曲線の傾きよりも寝てきた場合
3 身長が+2SDよりも極端に高い場合
4 急激に成長曲線の傾きが立ち上がってきた場合
5 身長曲線に比べて、体重曲線の傾きが極端に立ち上がってきた(太ってきた)
  あるいは寝てきた、または下がってきた(やせてきた)場合。

主な低身長の原因

1 内分泌疾患
  成長ホルモン分泌不全性低身長症、甲状腺機能低下症
  性腺機能低下症、思春期早発症、クッシング症候群など
2 症候群
  ターナー症候群、プラダー・ウィリー症候群、ヌーナン症候群など
3 骨系統疾患
  軟骨無形成症など
4 内臓疾患
  心疾患、腎疾患、消化器疾患など
5 SGA性低身長症
6 愛情遮断性低身長
7 体質性・特発性低身長

先天性の重症成長ホルモン分泌不全性低身長症は、遺伝子異常、周産期の視床下部−下垂体障害などにより生じます。出生時の身長、体重はほぼ平均で、徐々に低身長の程度が強くなります。丸顔でややぽっちゃりとした体型の子が多いです。後天性の原因の多くは、視床下部−下垂体周辺の腫瘍です。軽症・中等症成長ホルモン分泌不全性低身長症の原因は不明です。成長の仕方や顔貌、体型は特発性低身長症の子どもたちと差はなく、検査をしなければ診断できません。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断

成長ホルモンは脈動的に分泌され、日中はほとんど分泌されません。したがって、日中の一回の採血で、成長ホルモン分泌の程度を知ることはできません。そこで、早朝空腹時に成長ホルモン分泌を促す薬を投与して、30分おきに2時間採血する「成長ホルモン分泌刺激試験(負荷試験)」が行われます。最も高い成長ホルモンの値で、分泌の程度を評価します。当科では外来で負荷試験を行っています。
性腺機能低下症の子はやや小柄で成長することが多く、思春期発来が遅れることが診断のきっかけになります。診断は成長ホルモンとは異なる負荷試験に対する性腺刺激ホルモンや性ホルモンの反応により行いますが、生理的に思春期開始が遅れる思春期遅発症との鑑別が困難なことが多いです。治療は、性ホルモンの補充、蛋白同化ホルモンなどにより行います。
ターナー症候群は、X染色体の異常により約1,000~2,000人に1人の女の子に発症します。特異的な顔貌、ほくろが多い、首が太い、ややずんぐりしている、中耳炎を繰り返すなどの特徴があります。60-70%に性腺機能不全を合併します。生まれつきの心臓や腎臓の病気を合併したり、甲状腺疾患や糖尿病になりやすい体質があるので、早期診断がとても重要です。診断は染色体検査で行います。治療は成長ホルモン注射、性腺補充療法などです。思春期開始年齢までに、少しでも身長を高くすることが目標です。
SGA性低身長症は、お母さんのおなかの中にいた期間に応じた体格よりも小さく生まれて、2歳までに身長が-2SD以上に達しなかった低身長です。一定の基準を満たせば、3歳以降に成長ホルモン治療の適応となります。小学校入学まで、思春期開始までに少しでも平均身長に近づくことが目標になります。

成長ホルモン治療

現在成長ホルモン治療が認められているのは、

・成長ホルモン分泌不全性低身長症
・ターナー症候群
・軟骨無形成症・軟骨低形成症
・慢性腎不全性低身長症
・プラダー・ウィリー症候群
・SGA性低身長症 

の6疾患です。
治療は週に6〜7日、家庭で本人か家族が皮下注射します。注射部位はおしり、太もも、おなか、上腕のいずれかです。針は細くて短いため、採血や予防接種と比べてずっと少ない痛みです。

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