1型糖尿病とはインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンを分泌できなくなり、血糖(血中のブドウ糖)値が高くなる病気です。日本における年間発症率は10万人当たり1~2人で、とても少ない病気です。原因はまだ完全に解明されてはいませんが、1型糖尿病になりやすい体質に、ウイルス感染などの環境因子が作用することで、自己免疫異常が誘導されてβ細胞に炎症が起こると考えられています。つまり、風邪をひくように、たまたまかかる病気で、発症を予知、予防することはできません。インスリンの主な働きはブドウ糖を細胞内に取り込んでエネルギーを産生することです。このエネルギーは脂肪やタンパク質から作られるエネルギーと比べて圧倒的に多く、また脳細胞はブドウ糖しかエネルギー源にできませんので、インスリンがなければ元気に生きていくことができません。
1型糖尿病の治療は、失われたインスリンを注射により補充することです。なるべく生理的なインスリン分泌に近づけるために、各食前や就寝前にインスリンを自分で皮下注射します。間食時や高血糖時に追加注射することもあります。また、食前、就寝前などに指先に針を刺して血糖値を測定して、インスリン量を調節します。
治療により血糖値を上手にコントロールして、低血糖を防ぐとともに、合併症を引き起こさずに毎日元気に生活できることが治療の目標です。治療を適切に行っている限り、他のこども達と全く変わらない生活を送ることが可能です。運動会、水泳、マラソン、修学旅行を含む全ての行事への参加が可能です。食事制限はありませんので、給食はすべて食べられますし、おかわりも可能です。
1型糖尿病のこどもは、β細胞がないこと以外に異常はありません。したがって、β細胞を再生して体に戻せば、1型糖尿病を治すことが可能になるかもしれません。現在、世界中の研究者がβ細胞の再生医療の実現にむけ研究に取り組んでいます。
当院では、子どもの時期に発症した糖尿病の臨床研究を実施しております
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院長は長年、1型糖尿病の家族会である北海道つぼみの会の指導医として、糖尿病サマーキャンプに関わってきました。北海道のサマーキャンプは毎年8月に3泊4日の日程で、深川市の道立青年の家で行われております。キャンプでは、糖尿病の勉強をするだけではなく、ハイキング、運動会、バーベキューなどのレクレーションも行っています。キャンプは、こども達にとって、同じ病気の仲間と出会い、病気について肯定的な気持ちを持てるようになる意味でとても有意義です。インスリン自己注射ができない子にとっては、できるようになれる良い機会です。母親にとっても、自分の子以外の患者や家族と出会い、他の家族や高校生以上の患者と話をすることで、日々感じている不安から解放され、大きな安心感をもてるようになるようです。