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ビタミンD欠乏症の最近の知見

ビタミンD(VD)欠乏症は栄養環境の改善に伴い大きく減少し、過去の疾患という印象がありますが、近年世界的に発症頻度が増えてきました。米国では1980年代半ばから増加し、小児の約15%がVD不足、1-2%がVD欠乏と言われています。日本においても最近は報告が増加しています。
VDは皮膚において紫外線のエネルギーにより合成されます。他のVDの供給源として、きのこ類や魚などの食物があります。VDは肝臓で代謝されて25OHDという貯蔵型のVDとなり、血中カルシウム濃度の低下などの情報によって、腎臓で活性型VDになります。活性型VDの働きは、主に小腸におけるカルシウム吸収、骨における石灰化促進で、血中カルシウム濃度を維持し、骨を丈夫にします。このようにVDは特定の器官で合成、分泌され、血液などを通して特定の細胞で効果を発揮するためホルモンの一種と考えられています。
VD不足、欠乏は、成長期にはくる病、成人では骨軟化症を引き起こします。また、低カルシウム血症によるけいれん、テタニー、立てない、歩けないなどの筋力低下を起こすこともあります。くる病になると、O脚や成長障害などを呈します。VD欠乏性くる病の治療は天然型VDの補充ですが、現在日本にはこれらの医薬品はありません。したがって、活性型VD製剤を投与しますが、高カルシウム尿症による腎石灰化を引き起こすことがあり注意が必要です。 VDは紫外線により皮膚で産生されるので、紫外線不足はVD不足を引き起こします。メラニンの多い有色人種は白色人種に比べてVDが不足しやすく、過度の日光浴制限、肌の露出制限、強力なサンスクリーンの使用はVD不足につながります。また、緯度の高い地域は地表に達する紫外線量が少なく、夏に比べて冬の紫外線は少量です。北緯40度以上の地域では、冬に地表に達する紫外線量はほぼ0と言われ、北海道ではVD欠乏症の発症頻度が高いことが知られています。12月の札幌の必要紫外線照射時間は那覇の約10倍との報告もあります。
VD摂取不足もVD不足の原因となります。偏食や菜食主義、魚・卵アレルギーに対する極度の食事制限によるVD欠乏症が増えています。また、妊婦のVD不足は新生児期、乳児期のVD不足につながります。最近大きな問題となっているのは、完全母乳栄養児のVD欠乏症です。母乳に含まれるVDは人工乳に比べて明らかに少なく、完全母乳栄養児の血清25OHDは欠乏あるいは低下しています。実際、乳幼児期に診断されるVD欠乏性くる病の大多数が完全母乳栄養児です。乳児のVD不足を予防するために、母乳栄養児には生後数日以内からVDを与えることが国際的に推奨されています。
日本人の食事摂取基準では、0-5ヶ月児のVD摂取目安量は1日2.5μg、日照を受ける機会が少ない児は5μgとされ、諸外国と比べて少なく、完全母乳栄養児に関する記載はありません。妊婦、授乳婦のVD摂取推奨量も諸外国と比べて少量です。
現在は保険適応外の25OHDの測定が今後保険適用となることが決まりました。これによって、VD不足、欠乏の正確な診断が可能になります。また、有色人種であり、高緯度地域が存在する日本における適正なVD摂取量、推奨紫外線照射時間を明らかにすることができます。今後、天然型VD製剤を使用できるようになり、新生児期からVDを補充することが望まれます。